関係ない1

自分の記憶については、とことん曖昧でその曖昧さに身を委ねるとしたら、まだ桜がその短い命を終える前のことだった。冬の匂いも残る中、久しぶりに始まった大学の眩しい景色と何か所在のない昂揚感がひしめいているムードに辟易としながら、いつもの喫茶店に辿り着いた。僕は大学四年生になっていた。いつか仲が良かったあの子の好きだったアイスココアを頼み、カウンターから一番近い端の席に座る。この席に座ると多くの言葉がこの喫茶店にこの席に沈殿しているような気がして、萌芽することない感情達がノスタルジーと共に犇いている。